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秘匿の闇市〜Midnight〜
第6章 欠陥していく彼女
「それにしても、また君かね。今度は何の病気だと思ったが……良かったのか、そうでないのか……それで、相手は……」
無論、あさひには分からない。
疾患が頻りと出始めて以来、男の客の相手をしなかった。そうしたことから絞り込めば、あさひに数種類の性病を伝染したあの男達の誰かと考えられる。
ざっと二つ選択肢を示した医師に、本人より先に口を開いたのは飼い主だ。
「堕胎させます」
「少し慎重に考えませんか。中絶は将来、不妊に多大な影響も及ぼしますから」
「あさひに将来はありません。私が買い取りましたから」
医師は、例のごとくこの館の事情を知る無免許の男だ。
男嫌いの佳子が信頼を置いているのは、既に性交もしなくなったような年端だからというのもあるのか。見たところ佳子の父親くらいだ。それでいて小松原氏に比べると、すこぶる人の良さそうな人相だ。無免許でも腕は確かで、頭の堅い世間が眉を顰めるようなことを見聞しても、いつでも穏やかな顔を浮かべている。
避妊の薬は、百パーセントの効果ではないと聞く。
あの日、あさひは三時間以上に亘って、精液漬けになった。姫猫の娯楽が、あまりに低い確率に勝ったのだ。