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秘匿の闇市〜Midnight〜
第6章 欠陥していく彼女
花火大会が行われるという海近くの広場に出ると、開会四十分前だというのに、物見客でごった返していた。
どうにか眺めの良さそうな場所にブルーシートを敷いたところで、志乃がかき氷を食べたいと言い出した。普段は猫っ可愛がりしている姪に、手伝いまで言いつける。
「お前が食べたいんだろ」
「だから財布は出したじゃない。ね、あさひ。せっかく可愛い格好しているんだから、歩き回って見せびらかさないとバチが当たるよ」
「私は構いません。叔父さん、かき氷、持つの手伝いますね」
「彩月ちゃんは、何味にする?」
「荷物持ちなら、あたし行きますよ」
「良いの良いの、あさひってば引っ込み思案なところあるでしょ。あまり話さない相手と、もっと話すべきだと思うの。だから手軽なこの人で練習ー」
志乃の気まぐれの目的は、単にかき氷ではなかったのかも知れない。
Angelic Prettyの洋服にしてはシンプルなワンピースの裾をひらひら揺らしてあさひ達が人混みに消えると、普段の自由闊達な彼女とは思い難い表情が、そこに顕れた。
「あさひちゃんから、何か聞いてる?」
「どういうことですか」
「お母さ──…立花育江と、何かあったのかなって」
その問いにありのまま答えたとすれば、この善良な女はどんな顔を見せるだろう。