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秘匿の闇市〜Midnight〜
第6章 欠陥していく彼女
「志乃さん、……」
「彩月ちゃんも、あさひちゃんとはいくら仲良くても隠し事はあるみたいだしね」
「知り合って短いですし」
「昼間、お風呂で気づいちゃった。上手いこと言って、彩月ちゃん、あさひちゃんを避けてなかった?腕の包帯も、最近の怪我じゃないでしょ」
「…………」
「あさひちゃんは、ノーと言えない子だから。でもごめん、見えた。お姉ちゃんにやられたやつ」
「え……」
おそらく彩月は、あからさまに顔色を変えた。
陽音の心変わりした男の身元を知っているのは、あさひの父と祖母だけのはずだ。その上、志乃は行方不明の姉を慕っている。陽音が夫婦同然に暮らしていた瀬尾隆の不義を疑って、その矛先を継子に向けるような女であるとは、思いつきもしないだろう。
「あ、隠せてはいたよ。温泉でタオル巻くなんて、普通だし。私はお姉ちゃんがいつかやると思っていたから、勘ぐりすぎていたのかも。ってか包帯と絆創膏ね、入念だなって。彩月ちゃんって、あんなに怪我するほどそそっかしい感じもしないし」
「志乃さんは、あの人を好きだったんじゃなかったんですか」
「お姉ちゃんのことは好きだったよ。ただ、親に痛い目見せられた子は、実際に親になった時、同じことする例が多いんだって。お姉ちゃんの恋人が彩月ちゃんのお父さんだったのは、お正月、立ち聞きして知った。それに苗字も」
「……立花陽音は、育江さんに……」
「私に可愛げがなかった分、お母さんの癇癪はお姉ちゃんに行ってたの」