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秘匿の闇市〜Midnight〜
第6章 欠陥していく彼女
* * * * * * *
楽しい時間は瞬く間に終わる。
さっきまでみぞれ味のかき氷で涼を取りながら、空のキャンバスに花が咲き乱れるのを待ち遠しく感じていたばかりなのに、いざ上がった花火に圧倒されている内に、祭のあとの静寂が夜を覆った。
かけがえのない身内達に、あさひの胸を逸らせて止まない彩月。
彼女らと眺める幻想的な光景がまるで永遠にも感じられたのは、あさひの深層心理が、そうした願いを芽吹かせたからか。
祭り特有の空気の残滓を拾い集めるようにして、屋台で小腹を満たしながら別荘に戻ると、深夜近くになっていた。
育江が買ったのは、山沿いの戸建てだ。綺麗にリフォームされた平屋は、周辺一帯も似た感じの建物が明かりを点けていた。
寝支度を済ませて、あさひは冷たい飲み物を飲みながら、志乃のスマートフォンでテレビを観たり、今日の土産を分けたりした。
眠たくなるまでリビングで寛いで、零時の手前で部屋に戻った。
育江の好みらしからぬパステルカラーのシーツやカーテンで彩られた寝室は、ベッドが二つとチェストが一つ。
中学最後の修学旅行を思い出す空間だ。
「大丈夫?」
「何がですか」
「最近、よく眠れてないんだろ」
「あ、……」