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秘匿の闇市〜Midnight〜
第6章 欠陥していく彼女
彩月の指摘を受けて、はたと思い出す。
確かに正月明けから今日までの間、入院したのを除いて、あさひの生活は不規則だった。
佳子の客があさひを指名するのは昼間に限らない。深夜に檻から出されたり、明け方まで接客して、朝食を挟んだあとまた別の客の相手をしたりすることもある。つまり下手すれば二十四時間起きっぱなしもあったため、時折、あさひは目の下にクマを浮かべていたのだ。
「あんなに動いていると、眠気なんて飛んでいました。それに、楽しまないともったいないなと」
「なら良いけど。ぶっ倒れても、介抱出来るのは明後日までだから」
「有り難うございます」
…──彩月に世話されるなら、悪くない。
いだいたことのない出来心に戸惑いながら、頬が緩みかけるのを振り払うようにして、あさひはシーツにくるまった。枕に頰をうずめると、太陽を想わせる香りがした。
あさひは、チェストの向こうに見える彩月に呼びかける。
「もし私が叔母さん達の子供だったら、全然違う感じになっていた……でしょうか」
「あさひが?」
「叔母さんと叔父さん、絵に描いたようなパートナーだなって。いつも思うんです。でも祖母は、愛なんて不確かで幸せの保証はくれないって。実際お父さんは、お母さんに恋をして私が産まれたらしいですけど、今は一人ですし……」