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秘匿の闇市〜Midnight〜
第6章 欠陥していく彼女
* * * * * * *
贖金という名目で、半年振りにあさひを呼んだ姫猫が佳子に支払ったのは、春の五倍を超えるらしい。
女一人の時間を買うにしても破格の額が佳子の通帳に入ってまもなく、あさひはめっきり秋の装いに衣替えした久しい景色を横目に、自身の起臥する館よりこぢんまりした、それでいて門を一度くぐり抜ければ莫大な富が窺い知れる屋敷を訪ねた。
「他人の持ち物を妊娠させてしまって、本当ならあんな賠償金では足りないと、恥じらっているわ。けれど、もしかしたら貴女に出来た子供は、お兄様の遺伝子を受け継いでいたかも知れない。どういうことか分かるわね?」
「えっと、……」
「オレの子供を返せ!人殺し!」
「…──と、いうわけよ」
表の庭園と同様、ついこの間まで春の装いをしていた姫猫も、クラシカルな渋い色のワンピースに身を包んでいた。あの日からまた買い替えられたらしい燕脂のソファで脚を組んで、目を吊り上げた金髪の男の前に腕を伸ばして、兄の行く手を制している。
姫君のような令嬢の側には、まづると紀子、紹屋の他に、相変わらずメイド達がかしこまっている。
彼女らもしっかりと着込んでいるのとは対照的に、あさひは裸だ。屋敷に入るや、着ていたものを一枚残らず取り上げられて、正座を命じられたのだ。