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秘匿の闇市〜Midnight〜
第6章 欠陥していく彼女
二度目の入院生活を終えて、それまであさひの日常に常態的に溶け込んでいた何かが欠けていた。
その何かの正体を、あさひが思い出したのは、退院して五日目の朝だ。
避妊薬だ。
今まで抜け落ちていたのは、それだけ頭が回っていなかったのだろう。
かくて毎朝の食事のあと、彩月が皿を下げて行くと、あさひは佳子と二人きりになったところでその話を持ち出した。
「そんなもの必要ないじゃない」
平然とした顔で、佳子が言った。
「家政婦ならともかく、貴女はペットなのよ。私の持ち物。もしもの時は、今回みたいに手術すればどうにでもなるわ」
「でも、その度に、新しい命を否定することに……」
「早い内に堕ろしている。仏野さんのおふざけを間に受けたなら、改めなさい。合法よ。それにね、普通は一度堕ろせば、妊娠率はうんと下がる」
それであさひも安心していた。数日前まで、今後は一日に百人の男を相手にしようと五月と同じのことは起きないと、たかをくくっていた。
だが、遊ただ一人を相手にしただけで、彼の子供を身籠った。あさひは、また合法というご都合主義に守られて、罪を犯してしまうだろう。