この作品は18歳未満閲覧禁止です

  • テキストサイズ
秘匿の闇市〜Midnight〜
第6章 欠陥していく彼女







 あさひの二度目の妊娠が発覚した夕方、彩月は庭園の森近くに佳子を見つけた。
 爽籟を覆った憂鬱な朱色を睚眥していた彼女は、かつて良人と呼んだ男に怨恨でも飛ばしていたのかも知れない。

 彩月がぎょっとしたのは、彼女が上着も羽織っていなかったことだ。

 声をかけると、首を回した彼女の顔は、存外に生気が抜けていた。


 あさひが妊娠したの。たった二人、男を相手にしただけで、子供が出来たの。…………


 小松原家における佳子の立場は、まるで薄氷だ。母親が愛人だったと聞いている。政略結婚でそこそこ名の知れた男のものになり、その苗字を名乗っていれば、表を堂々と生きることを許されたというのも、いつか彼女が話していた。

 だが、佳子は良人の苗字を捨てた。
 戸籍謄本における佳子は未だ小松原でないにしても、彼女にとってその男との三十年は、それだけ忌まわしかったのだ。

 せめて子供が出来ていれば、と、彼女が漏らしたこともある。小松原との関係の強い組織のトップの後継者の母親であれば、自分の地位も、もっと確かだったろう。それが彼女の言い分だ。


 ろくでもない男だったらしい。愛し方を知らない、愛すれば良いとだけ考えていた男と添い遂げようとした痕跡が、本当に欲しかったのか。

 彩月は佳子に訊いたことがある。彼女に、首を横に振らせるつもりで訊いた。
/372ページ
無料で読める大人のケータイ官能小説とは?
無料で読める大人のケータイ官能小説は、ケータイやスマホ・パソコンから無料で気軽に読むことができるネット小説サイトです。
自分で書いた官能小説や体験談を簡単に公開、連載することができます。しおり機能やメッセージ機能など便利な機能も充実!
お気に入りの作品や作者を探して楽しんだり、自分が小説を公開してたくさんの人に読んでもらおう!

ケータイからアクセスしたい人は下のQRコードをスキャンしてね!!

スマートフォン対応!QRコード


公式Twitterあります

当サイトの公式Twitterもあります!
フォローよろしくお願いします。
>コチラから



TOPTOPへ