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秘匿の闇市〜Midnight〜
第7章 救済と矛盾
* * * * * * *
育江の教育の特異性を覚ってからも、あさひは呼び水が施されれば、しかるべき生理現象をきたしていた。ローションを塗りたくりたがる客も中にはいるが、一日に途方もない回数、潤みに異物を受け入れても、愛液は枯れない。それに、あさひは淫らな声を出すことで、自身の劣情を扇動してもいた。
ようやく余暇にありつく頃、快楽を上回る疲労感が、今夜もあさひにのしかかっていた。
女達の体液で、胃は容量を超えていた。
それでも、昼間は美影の、夜は彩月の用意した食事を、あさひは辞退する術を持たない。
「半分くらいは食べな」
「分かってます。美味しいですよ、それに、これなら胃もたれしませんし……」
あさひの好む食材ばかりが目に飛び込む食膳からは、彩月の配慮が滲み出ている。
だが今朝も、あさひの夢に、胎児達の肉塊が現れた。人間になりきれなかった彼らはあさひに恨みを向けて、赤い腕を伸ばしてきた。その腕からしたたっていた血液は、ともすれば目前のトマトの水気と同じではないか。白濁した味噌汁の中に、あさひの味わってきた女達の愛液が、ふと蘇る。
口移しなら飲み込めるだの、半分食べたら褒めて欲しいだの、さんざん彩月に甘えながら、あさひはやっとの思いで皿の底を覗かせた。
サプリメントで生きられる。壊れたら、治療を受ける。
そうした理屈に納得するのは、この館では佳子くらいだ。