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秘匿の闇市〜Midnight〜
第7章 救済と矛盾
「ですよね。おばあちゃんを恨まないのか、何故、抵抗しなかったか。ここに来た頃、皆さんに不思議がられていました。私は、皆さんに納得していただけるだけの答えが出せなくて……」
そればかりか、あさひは自立した女達の気こそ知れなかった。客を相手にしても主導権を握る彩月や、勤勉家のたまき、ここにいる家政婦達を除いても、あさひのような生き方に甘んじている女達を見たことがない。
「私、高校を出たら働くように言われていたんだ」
あさひが話題を取り下げるより先に、圭が身の上話を始めた。
彼女の実家は裕福とは言えず、自営業だった両親は経営破綻、今はパート収入だけで、住宅ローンを返済している。そうした失敗を目の当たりにしてきた圭は、将来が明確にならないまま稼ぎに出ることを恐れた。毎月の仕送りを条件に、進学と下宿の許可を得た。
圭曰く、それはよくある話らしい。
両親のような過ちはしない。将来は、もっと物珍しい話をする。
彼女の顔に、強い決意が滲んでいた。