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秘匿の闇市〜Midnight〜
第7章 救済と矛盾


「か、過激ですね……!」

「あさひに言われたらおしまい」

「私でも、神社でああいうことはしません」


 棒付きキャンディを舐める横顔を盗み見ながら、あさひは胸が詰まっていくのを自覚する。冬の風に似た清冽な声が、腰の奥まで熱くしていた。

 憧れるとすれば、相手が今まさに隣にいる彩月に限る。


 周囲の目に、あさひ達はどう映っているのか。考えるほど、頭がどうにかなりそうだ。


「強要されたら、やるくせに」

「え──…んっ?!」


 練乳の混じったロイヤルミルクティーが、桃の味に相殺された。彩月の指があさひの顎を捕らえて、彼女のイルカのキャンディが、口内に滑り入ってきたのだ。


「ぁっ……わ……」

「この色で桃って面白くない?ほら、あさひ。もっといやらしく舐めなくちゃ」

「んんぅーっ」


 あさひがイルカを舐め出すと、顎を支えていた彩月の指が離れていった。彼女が竹串を握ったあさひの片手を捕まえて、テディベアを口に含む。


「美味しい。あさひの味でべとべとなのも、悪くない」

「はしたないですっ」

「いつからそんな真面目ちゃんになったの。神様なんか信じてないだろ、どうせ」


 あさひはわざとらしく舌を伸ばして、イルカをしゃぶる。

 圭があさひの髪や顔をいじった時、話していた。神社の神体が鏡であるのは、手を合わせる時、参拝者が自身と向き合うためらしい。祈りや感謝を捧げながら、自身の在り方やなすべきことを見直す。
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