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秘匿の闇市〜Midnight〜
第7章 救済と矛盾
「こんなに早く叶っちゃったら、有り難みないですよぉ……」
薄氷ほどになったテディベアを、最後は噛み砕いて嚥下した。
やっぱり憧れてたんだ、と、彩月があさひをからかった。
「彩月さんともっと仲良くなれるように、って、いつも願っています。あ、友達として……」
「そっか、あさひって友達いなかったんだっけ」
頷きながら、胸中、あさひは安堵していた。
彩月がいなければ、とっくに逃げ出していた。誰に迷惑をかけるより、きっと耐えられなかったからだ。志乃に泣きついて、育江や佳子がどうなっても構わない、彼女や父を悲しませてでも、なりふり構わず助けを求めていただろう。
佳子の支配に耐えかねたあの日、彩月はあさひを助けると言った。何年かかっても、館から出す。出来る限り守る、とも。
彼女の想いが、どれだけあさひを支えているか。彼女の同情を誘っていられるなら、ペットを辞められなくて構わない。この感情を否定したままで、構わない。