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秘匿の闇市〜Midnight〜
第8章 愛され少女の教育法
「思い出しました……。美影さん、あの、ここ、地下じゃありませんよね?何で帰るんですか?愛想、尽かされちゃいました、か……」
主人の意図だったとは言え、客観視すれば、あさひはすこぶる醜態を晒したことになる。それでも、曲がりなりにも高額なペットを、佳子が簡単に手放すとは考え難い。
あさひは美影に説明を求める。すると彼女は、明らかに言葉を選びながら、しかし嘘は挟まないよう、事実を概括するべく努めようともしている様子で話し始めた。
「待って下さい、私、ダメですよね?戻ります。美影さんにも彩月さんにも、迷惑かけてるじゃないですか」
「良いよ。あさひちゃんは帰って。それに平気じゃないでしょ。ちゃんとした病院で診察受ければ、分かることだよ」
「それでも……」
「お父さん達に会いたくないなら、しばらくここにいて良いから。何だったら、私の実家も部屋空いてるし」
「──……」
それからまもなく、美影が朝食の買い出しに出かけた。
あさひは顔を洗って、見覚えのある衣装に袖を通して、髪を整えた。ホテルを出る時になると、ロビーで見かけた時計の針は、毎朝あさひが檻で起床していた時間を指していた。総合病院への移動中、美影が何度かスマートフォンをチェックしていた。