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秘匿の闇市〜Midnight〜
第8章 愛され少女の教育法
* * * * * * *
あさひの入院した病棟には、美影が足繁く様子を見に来た。
食糧の入った買い出し袋を下げていた日もあれば、彼女が彩月と連絡をとって、佳子からの伝言を受けていた日もあったところからするに、あさひを解放したことで、二人が特に損害を被らなかったというのは本当だろう。
昼間は美影や同室の患者達と世間話に興じたり、気分の良い日は散歩をしたりしている内に、あさひは回復に向かっていた。六月になると志乃達と剛史とも面会するようになり、彼らの暗い顔に罪悪感を覚えながらも、あさひは彼らと今後に関する話もした。
入院生活は、苛酷だった。
やたら早い就寝時間を過ぎてもなかなか睡魔が訪れず、説明し難い孤独と不安が毎夜のようにあさひを襲った。
ただ、脚と脚の間に手を滑り込ませたり、自ら乳房に触れようという欲求は湧かなかった。ここに来てからあさひを満たしていたのは常に解放感と安堵で、ただ、こうも一人で朝と夜を過ごしたことは、これまでの人生になかった。
あさひは、高校での虐めで心身を病み、中退したことになっていた。
美影の取り計らいが功を奏して、あさひを担当した医師が、彼女の説明を鵜呑みにしたのだ。剛史らも下手に詮索することを避けて、志乃は育江の保護能力を見限って、あさひを引き取ることを決断した。
約二ヶ月半過ごした病室での最後の朝、相変わらずここの壁は気味悪いまでに清潔で、起きるなりあさひを消毒液の匂いにかき抱いた。