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秘匿の闇市〜Midnight〜
第8章 愛され少女の教育法


「何はともあれ、大学は学部さえしっかり選べば、グループワークや運動が不得意でも困らないよ。必修科目は単位取るまで難航することもあるけれど、志乃さん的には、留年も仕方ないってお考えだし」

「いいえ。ただでさえ迷惑かけて置いてもらっているんです。学校はなるべく良いところ目指しますし、早く自立出来るように頑張ります」

「あさひちゃん、その話はしない約束。私が謝りたいくらいだよ。学歴社会なんて古いし、あさひちゃんはやりたいことをゆっくり探して、十年留年したって良いからね。何なら自立なんかしなくたって、私の目の保養になってくれていれば」

「叔母さんっ、私はお人形じゃないよっ」

「なーに。人形みたいに可愛いじゃない。でも、そうだね。やりたいこと見つけて、その結果、あさひちゃんが何か頑張るなら、私は全力で応援するよ」


 理良のような優等生が社会に出ると、志乃のような女になるのか。

 朝は髪すら適当にして、分厚い書類を腕に抱えて、家を飛び出る。帰ったあとも休みの日もデスクトップに向かう姿が定着している志乃は今、あさひの斜め向かいで、楽しそうに笑っている。

 十七歳まであさひの保護者だった育江は、志乃を不幸な女の典型だと言っていた。三者面談の帰り道、他の女子生徒らとすれ違っては、あんなにも賢く自我の強い女達は、見ていると気の毒で涙が出そうになると言っていた。

 だが、あさひからすれば理良は眩しい。言うまでもなく志乃は、彼女の良人も一目置いている。

 圭にもたまきにも、育江とは別種類の野望が根付いていた。育江が至高としていた喜びは、彼女らにとって、目標に達するための行程に過ぎなかった。
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