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秘匿の闇市〜Midnight〜
第8章 愛され少女の教育法
「あさひちゃん……」
「あ、ごめんなさい、ぼーっとしてた」
バスが止まった。
冬の浮かれた繁華街に降り立つと、あさひは志乃と、ショーウィンドウから既にピンク色の壁や色とりどりの洋服が目を引く路面店に入っていった。馴染み深い扉を開けるとすぐ、顔馴染みの店員が、あさひ達に進み寄ってくる。
「いらっしゃいませ!あさひさん、そろそろお越しになるだろうとお待ちしておりました。新作ご覧になりますか?」
「うん、見せてお姉さん。あさひちゃん、あれだよ?昨日私とネットで見てた、ふわふわバニーのスノードームシリーズ!実物の可愛さやばいねっ。あ、もちろんコートもちゃんと選ぶからね」
西洋人形のように化粧した店員は、天使の輪っかを浮かべた長い茶髪をたまねぎヘアの形に結って、頭の天辺からつま先まで、たくさんのリボンで飾っている。
あさひの前に、彼女が今まさに袖を通している最新作が並んでいく。デザイナー描き下ろしのイラストを華やがせるようにして、雪の結晶が散りばめられたシリーズは、ワンピースの他にブラウスとボレロとニーハイソックス、ジャンパースカート、数種類のアクセサリーが出ているようだ。
「とりあえず、ピンクと赤とパープル。着てみて。ワンピとジャンスカ両方にしても、二色しか選べないから、あさひちゃんお願い、試着して!」
あさひは自分自身がうずもれるほどの洋服と、試着室に押し込められた。
試着を終えるごとに一式返して、次の一式を受け取っては試着してを繰り返しながら、あさひは思いのほか楽しんでいる自分に気づく。