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秘匿の闇市〜Midnight〜
第8章 愛され少女の教育法
* * * * * * *
年末の大掃除の小休憩中、彩月が館内の私室も軽く整理していると、クローゼットの奥深くに、ヘッドドレスが落ちていた。
あさひの荷物は、彼女が志乃達に引き取られたと聞いた直後に、美影に頼んで送らせた。
ただでさえ容量があった上に、佳子があさひに与えていた外出着も詰めたために、ヘッドドレスの一つくらい漏れていたところで、今まで気づかなかったのも無理はない。
「…………」
ピンク色のサテンのリボンに、ピンクと黄色の花飾り。乳白色のフリルレース。
家政婦の寝室にしては贅沢な空間でも、このヘッドドレスは浮いている。あさひが、確かに同じ屋根の下にいた証。きっとまだ彼女の匂いが残っているだろうそれをローテーブルに置いて、彩月はソファに凭れかかった。
「はぁ……」
人目を離れると、途端に傷が悲鳴を上げる。
昔の名残りで痛覚まで鈍った身体は、深傷を負うところまで嬲られなければ満たされない。その時は愛に満たされて、病のように恍惚とする一方で、昼間の業務に自然現象が襲いかかる。
キッチンでは、飽きもしないで圭が甘いものを焼いていた。大掃除で動き回っているからこれくらい食べても平気だと言って美影達を巻き込んでいた彼女の誘いを辞退して、彩月は私室の掃除を理由に、本当に休むための時間を確保した。
それでもヘッドドレスは、早く美影に預けておきたい。
廊下に出ると、ちょうど彼女と鉢合わせた。圭のケーキを佳子に届けていたらしい。