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秘匿の闇市〜Midnight〜
第8章 愛され少女の教育法
* * * * * * *
「そんなこと話すためだけに、来てくれたんだ。あさひって、意外とロマンチスト」
「…………」
「ごめん。ちゃんと向き合うべきだね。あさひの真剣な気持ち、それだけまっすぐだったから、あたしも気付いたはずなのに」
小屋の側に腰を下ろして寄り添って、あさひは横目に彩月を見ていた。
たっぷりの布が使われたロングコートは、二人の膝に被せるには十分だ。手先は冷たく頰は痛いくらいなのに、あさひの内側はぬくぬくしている。
志乃の不安は、彼女の思い過ごしだった。
あさひを解放したことで、彩月が何かしらの罰を受けていたとすれば、こうして話せもしなかっただろう。佳子の元にいたあさひには、尚更、分かる。
「スマホは、本当に切ってるだけ。志乃さんに言っておいて。ないだろうけど、もし小松原さんがあさひのこと訊いてきたら、あたしは嘘つけないし」
「それで美影さんは、トーク履歴を消してたんですね」
「そこまでする状況、普通なかなかないしね。志乃さんには、ほとぼりが冷めたら連絡する」
「…………」
そしてあさひは、やはりこのまま疎遠になるのか。…………
彩月を愛してしまったために、彼女に、あさひとは別に本命の女がいるために、変わらない繋がりは望めない。それは仕方のないことだ。