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秘匿の闇市〜Midnight〜
第8章 愛され少女の教育法
「お話ししてくれて、有り難うございました。たくさん迷惑かけて、ごめんなさい。彩月さん以上の人に出逢える自信も、誰かに愛される自信もないから、恋愛や結婚は無縁になっちゃいましたけど。もらった自由は大切にします」
林が予め確保した時間は、残すところ二時間半ある。
コートを彩月に預けたまま、あさひは正門に足先を向けた。
「待って、あさひ」
「え……」
未練がましく、まだ鼓動を鳴らしている。まだ甘やかな感傷が、あさひの後ろ髪を引いている。
歩行速度まで緩めていたあさひの肩を、彩月が後方から抱いた。彼女の腕が鎖骨を中心に交差して、あさひは、本当にこの場を離れられなくなる。
「…………」
「あさひが観てきたのは、幻想だよ」
「…………」
「大丈夫。一人くらい、あさひみたいなどうしようもないマゾをガラスみたいに大事に出来るヤツ、いるよ」
あさひを抱き締めるしなやかな腕に、やんわりと優しい力がこもった。
「騙しっぱなしも後味悪いから。聞いてくれない?」