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秘匿の闇市〜Midnight〜
第8章 愛され少女の教育法
育ての祖母を盲信して、彼女の次は落札者に身も心も委ねたあさひは今、彩月に心を向けている。
それは彼女が、彼女を支配下に置かない人間を、彩月の他に知らないからだ。彩月が佳子の他に女を知らなかったのと同じこと。
彩月が無言でキスの了承を求めると、作り物のように可憐な顔が頷いた。
出逢った二年前に比べて、あさひは一段と垢抜けた。
成熟しきっていない、しかし少女らしからぬとも言える年端に至ったあさひの変化を、毎日顔を合わせていた頃は、気付く余裕がなかった。
無抵抗な唇にキスを施すと、僅かに緊張した呼吸が伝わってきた。
「…………」
角度を変えて、彩月は繰り返しあさひの唇に触れる。
幻のように柔らかなそれは、懐かしいのに初めてのようだ。この唇があれだけのみだりがましい喘ぎ声を出せるとは、こうしていると信じ難い。
「あさひ……」
「ん、彩月さん……」
清らかな感情を吐き出す口内をまさぐりたい。叔母という肉親の愛情を物語るドレスに包まれた肉体に、真新しい記憶を刻みたい。
発作にも近い欲望が、彩月の奥深くから迫り上げる。
彩月は、見返りを求めなかったことがない。
報われない愛などいらなかった。
それを求めなかったあさひの想いを受け入れて、もう二度と離さないと彼女に誓って、あらゆるものに翻弄された人間同士、胸焼けするほど甘い幸福を求められればと夢想する。
だからこそ、舌を絡めるまでの口づけはしない。
彩月はあさひの片手を取って、彼女の指の隙間を埋めた。彼女の温度を吸った手袋が、彩月の手先を暖める。