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秘匿の闇市〜Midnight〜
第8章 愛され少女の教育法
「ごめん、彩月。小松原さんが今度のお茶会の打ち合わせで電話したら、林さんのお宅、お父さんが出て……林さんに代わっちゃって……」
「彩月さん……」
「美影、分かってるわよね?彩月は何も知らなかったのだから、この子にあさひを捕獲させては、主人として道理に反するの」
「あさひ、今日は帰って」
「でも」
…──専用の檻に連れて行きなさい。
ことごとく皮肉を込めた佳子が命じるまでもなく、美影が準備していたのは目隠しだ。そして手枷。
彩月はあさひを後方に回らせて、美影に進み寄る。
「引き留めたのはあたし。これ以上、あさひを巻き込むのは──…くっ、……」
力任せに押しのけられて、彩月はその場に崩れ落ちる。
美影があさひに手枷を嵌めて、彩月が立ち上がるより先に、彼女の視界まで奪う。
「彩月、私のこと見損なえば良いよ。私が小松原さんを止められなかったし、あさひちゃんを呼んだのも」
「あさひ……っ」
華やかなレースの袖には釣り合わない、鎖で連結した重々しい拘束具に伸ばした彩月の腕が、美影に軽々とねじ上げられる。
「うっ……」
「小松原さんの傷を抉ったあさひちゃんがどうなったか覚えてるなら、おとなしくして」
それは、佳子の立つ位置にまでは届かないだろうくらいの耳打ちだった。
寒空の下、ただでさえ開きかけていた傷の場所を知り尽くした美影の力が、彩月の利き手に追い討ちをかける。