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秘匿の闇市〜Midnight〜
第8章 愛され少女の教育法
* * * * * * *
何者かの手が、肩を揺すった。
胸の奥深くの疼痛が、泥のようだった眠りにいたあさひを引き戻しかけていた時だ。
泣き腫らした目蓋をこすると、今しがたまであさひに呼びかけていた声の主が、夜闇を背負って枕元にいた。
「彩月さん……。何で?」
「小松原さんの書斎から、全部見てた」
その部屋は、あさひも何度か清掃に入ったことがある。
おそらく佳子はあすこにあるモニターから、彩月にあさひの陵辱現場を見せていたのだ。
「私……また、……」
眠る間際の記憶がはっきりしてくると、あさひは彩月に片手を伸ばした。
目が慣れるのにつれて、彼女が申し訳なさそうに眉を下げて、言いようのない慚愧に耐えているのが分かる。
柔らかな茶髪に伸ばしかけたあさひの片手に、没収されたはずのスマートフォンが触れた。
「先に返す。服は、これで揃ってる?」
「有り難うございます」
少女にも少年にも見える彩月の顔は、目を凝らして間近に見ると、二年前に比べて大人びた。それが彼女のどこか儚げな雰囲気を引き上げて、あさひの頬に熱を起こす。
甘い花を揺らしたそよ風を想う声の余韻を胸に残して、視線を下ろすと、大きめの紙袋からフリルやリボンがはみ出ていた。