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秘匿の闇市〜Midnight〜
第8章 愛され少女の教育法
* * * * * * *
それから数日間は、覚えていない。
年末年始は志乃達に連れられて旅に出て、三が日の明けてすぐ、剛史と初詣に出かけた。
あの神社は、あらゆることを思い出す。だが他の行き先を提案するだけの理由も思いつかなかった。例年のごとく浮かれた祭りの風景は、ぞっとするほどくすんで見えた。
悪い夢でも見ていたのだろう、と思い込むしかなかった。あさひの十九年間は、長い夢だったのだ。
あさひは第三志望校に合格した。
風呂や着替えの度に、あの館で負った傷が目に触れて、泣いていた。
勉強に集中しきれなかったのは、痛かった。あさひの心中を察してか、志乃は、半年でそれだけの成果を出せた姪を誇りに思うと言ってくれた。
春を迎えて、あさひは一歳下の同期達と、大学一回生になった。
入学式の帰り、四ヶ月振りに志乃とのLINEのトーク画面を開くと、入力フォームに身に覚えのない一言が打ち込まれていた。
"あさひの明日があたしの支え"
あの時、彩月が志乃に電話する間際か、あさひのスマートフォンを預かっていた時に打ち込んだのだろう。
永遠の中に囚われたいと、あさひは彩月と過ごす度に望んでいた。
そうなるどころか、ついに過去に置き去りにした。泣いても笑っても、歳月は止まらない。
あさひは、何かしていなければ気を確かに持っていられそうになかった。高校にいた頃からすればあり得ないほど、活動的な日々を送った。