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秘匿の闇市〜Midnight〜
第8章 愛され少女の教育法
佳子の館がふと頭を掠めては、足を向けそうになる。人知れず開かれている闇市に行って、安値で良い、自身を売り払いたくなる。
あさひに希望はなくなった。志乃に大切にされて、多くの仲間、加えて親友と呼べる友人がいても、絶望的に孤独だ。
命を絶っても、その動機になった本人に気付かれなければ、虚しいだけ。
そうした意見に、あさひは共感しない。
いつか彩月を想って死ぬだろう。しかもあの文面が彼女の本心だったとすれば、あさひは新聞にも載らない方法を選ぶべきだ。
彩月は、佳子の厭世的な観念を否定していた。失くせばその分、他に得られるものがあると。
あさひも彼女を理由に生きていた。しかし今は、不確かなものに期待している余力もない。
破滅の方法を考える内に、周りが就職活動を始めるようになった。流されるようにしてあさひもいくつかの企業にエントリーして面接に足を運んでいたある日、見覚えのある顔が人事部の中に混じっていた。
「冬華さん……?!」
しかつめらしいスーツに身を固めた社員らに紛れていても、その体線美が見て分かる冬華は、五年前、例の人身売買のオークションで富豪に落札されたビキニの女だ。