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秘匿の闇市〜Midnight〜
第2章 肉欲の競り市場
それからあさひはメイド姿に戻って、育江と佳子と受付へ向かった。
ステージ上では、二十八番の男が中央に出て、さっきのスポーツインストラクターに茶色い乳首を吸われている。
佳子の車を待つ間、育江は彼女に一つの条件を提示した。
定期的に、あさひに休みを与えることだ。
「実は、血の繋がった孫娘なんです。この子にも教えていない事情があって、手放さなければならなくなってしまったのですけれど」
「ええ」
「ですから、この子には叔母と叔父がおりまして、随分と可愛がられているんです。たまに会わせてやらないと、私、きっと娘に五月蝿く言われてしまいますから……」
つまり育江が求めたのは、志乃達への口裏合わせだ。高校を出るはずの再来年の春まで、あさひは友人の家に泊まっていることになるらしい。
佳子は快諾した。多額の買い物ではあったにしても、だからと言って早く元を取らなければいけないなどとは考えない、それが条件なら仕方がないと頷いた。
かくて明け方近い時間、あさひは佳子と帰路に着いた。育江はアタッシュケースをタクシーに乗せて、あさひの住み慣れた家に戻った。
後部座席から見る限り、運転手も相当の顔かたちをした女ということが分かる。佳子の車は、やがてあさひの見慣れない道を入り、十五分ほど走り続けた。ちょっとした森林を抜けると門が見えて、まさかと思えば、車はそこに入っていった。
一般市民が住むにしてはあまりに広大な敷地の奥に、やはり現実味のない洋館が見えた。
第2章 肉欲の競り市場──完──