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秘匿の闇市〜Midnight〜
第3章 飼育される侍女達

 目覚めると、あさひは、身を起こすのも惜しまれるほど心地好い寝具にくるまっていた。


 まるで童話のワンシーンにでも迷い込んだような部屋だ。

 サテンに花柄のシフォンが重なったシーツはフリルやリボンが豪華にあしらわれた掛け布団と揃いで、絨毯に被さるほど長いベッドスカートはフリルやドレープがふんだんに効かせてある。金色の装飾が施された天蓋ベッドそのものも、あえてヴィンテージに仕立ててあって、特別注文品ではないかと思う。


 あさひが思い出せる限りの、眠る間際の記憶のままだ。

 白い紙クロスの壁もやはり優雅な花柄で、猫脚ソファにキャビネット、それに広々とした空間には、猫の形の毛長の絨毯が敷いてある。


 数時間前、小松原佳子はこのダブルベッドのある部屋に、あさひを通した。

 あれからどれくらいの時間が経ったのか。

 時計もなければ窓もない。

 状況が全く掴めないが、公園での催しは、確かに現実だったらしい。

 その証拠に、あさひの首には革ベルトが巻かれている。喉の位置にハートのリング状の留め具があって、鎖が伸び、その鎖は近くの柱に繋がっている。鍵は佳子が持って行ったから、あさひの行動可能範囲は今、半径二メートル程度だろう。


 遠くに扉の開く音がした。

 女の話し声が近づくにつれて、あさひは安堵する。二人いるらしい女達の一方が、聞き馴染みのある声だったからだ。
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