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秘匿の闇市〜Midnight〜
第8章 愛され少女の教育法
十月に入って数日経ったある日、彩月は佳子に連れられて、地元を離れたホテルに出かけた。
そこは、別世界を切り取りでもしてきた風に、外観から洒落ていた。
ロビーは洋画でしか見ることのなかったような内装で、彩月の知る宿泊施設に比べて、客層からして違うのが分かる。
係員の誘導に従って、彩月は佳子と上階に向かう。初デートに浮かれる女のように腕を絡めてくる彼女とは、実際、外に出たのは初めてだ。
最上階に着くと、叙情的なスイートルームに通された。
「一度来てみたかったの。豪華ね、外の喧騒が嘘みたい。ただ、ウチの方が広いのは残念。花も取り合わせが……惜しい。でも窓は最高。こんな展望、滅多にないわ」
「同感です。もし高所恐怖症だったら近づけないくらい、こんなに町が見渡せるなんて」
「ねぇ。ただ、カーテンを閉め忘れたら、大変なことになってしまう」
「深夜なら、開けっ放しでそういう楽しみ方もありだとは思います。本当に小松原さんが視姦されるのは、許せませんが」
「とっくに視姦されていた人に、言われたくないわね」
彩月の腕をすり抜けて、佳子が窓辺に凭れて笑った。
確かに館からここまでの道中、すれ違う女達の数人が、彩月達に不躾な目を向けていた。
館にいればそれなりに聞き馴染むハイブランドのドレスでめかし込んだ佳子に羨望の目を向ける女達もいれば、女子大生くらいの団体は、面識もない彩月の恋愛事情を気にしていた。佳子が面白がった風に彩月に胸をすりつけると、彼女らの議論は熾烈を極めた。