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秘匿の闇市〜Midnight〜
第8章 愛され少女の教育法
「ALICE and the PIRATESだったかしら。この服、リクエストして正解だったけれど、女が近寄ってしまうわね。さっきの子達、きっと貴女を健気にママ活しているチャラ男とでも思っていたわよ」
「小松原さんがすり寄ってきた時点で、雇い主には見えなかったでしょうね。着こなしは安定の難易度で……」
「良いと思うわ。皇子を通り越して、雑誌くらい男装になると、私はあまりそそられない。元々、誰の勧めだったかしら」
「婦人会の、田代さんか……鈴本さんでしたっけ」
「ああ、あの二人が好みそう。あさひにはAngelic Prettyを勧めていらっしゃったから。そうしたらあの子、偶然、貴女の部屋に大量に預けていたのよね」
まるで辞めた家政婦の話題でも出す調子で、佳子がソファに腰を下ろした。
まもなくして、ルームサービスの係員が、表のドアのベルを鳴らした。
佳子が入室を促すと、運ばれてきたのは色とりどりのマカロンタワーだ。
甘い匂いが、瞬く間に立ち込める。花のような軽らかさで鼻腔をくすぐる七色の香りは、それが模型でないことを証明している。
「すごいわ、スイートルームに、マカロンタワー。一度は経験しておきたかったの。ケーキはいつでも頼めるし」
嬉々として座高ほどあるそれを眺めて、佳子がカメラアプリのシャッターを切る。