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秘匿の闇市〜Midnight〜
第8章 愛され少女の教育法
「残念ながら、本物よ」
「…………」
「あさひを買った時の領収書。あの子の所有権。燃やすも使うも、貴女に任せる。辞令も同封してしまったから、小切手は全額受け取って。私からの小遣いだと偽って、貴女が隆さんに振り込むよう頼んでいた給料だから」
「じゃあ、お父さんが帰ってこいって催促しなくなったのは?」
「多少の出費は惜しまない。言ったじゃない、お金なんてどれだけあっても墓にまで持って行けないと。私は彩月に、あの無職の面倒を見る義務はないと判断したし、今の状況をある程度楽しんだら、こうするのもありかと思っていたの」
佳子は、あさひを手放したあの日から今日までのことを話し始めた。
彼女の当初の目的は、あさひを精神的に追いつめるところにあった。
二度と他人の所有物にはなりたくないだろうあさひを見逃して、自由の代わりに、彩月を見捨てた罪の意識を背負わせる。そのつもりだったから、あさひが電話をかけてきた時は、いよいよ計算が狂ったという。
何を得られなくても彩月を愛する。
あさひの心は、小松原家に縛られてきた佳子の絶望に、僅かな出口を垣間見せた。