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秘匿の闇市〜Midnight〜
第8章 愛され少女の教育法
「私はお父様に愛されなかった。お母様はお父様の機嫌をとるのに精一杯で、いつも俯きがちで、私にも決して逆らわないよう口を酸っぱくしていた。生まれながらに自由のなかった私は、小松原から他の男に結婚という建前で厄介払いされたあとも、不自由だったわ。蛙の子は蛙。娼婦の孫が娼婦として養育されたのと、同じでね」
病的に小柄な、それでいて肉感的な十七歳の少女が観衆の前で全裸にされた時、佳子は憤りを覚えた。
何の疑問も持たずに微笑んでいる本人も、肉に飢えた獣の顔で野次を飛ばしている客達も、同じ人間かを疑った。
あさひを落札したのは、佳子なりの復讐だ。弱者を当然のごとく弱者に至らしめておこうとする、小松原本家のような人間達を見返すための復讐らしい。
「だからあの子の初めては、彩月に摘ませた。恋していたのは、見て分かるほどだったから。立花育江に支配されてきた売り物が、あのおばあさんより幸せな初めてを経験する──…気味が良かったわ。私や貴女より良い思いをさせられて」
「…………」
「彩月は私を離れるべきなの。貴女を呪ったあの子の母親の言葉に背いて、幸せに強欲になるべきよ。生まれ育った場所が未来まで左右してはいけないし、私がそれを証明出来なかった代わりに、貴女に叶えて欲しい。本当に好きな人と、誰にも干渉されないで、思うように生きて」
「その相手を、小松原さんにしたい……と言っても?」
「その気持ちがすり込みよ。彩月が弱っていた時に、ただ私がそこにいただけ」