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秘匿の闇市〜Midnight〜
第8章 愛され少女の教育法

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 先日、志乃があさひの誕生日を祝うために有給をとった。

 期間限定のキャラクターカフェでウサギの頭巾を被ったキャラクターのオムライスを食べて、大きめのケーキを志乃と半分ずつ分けた。プレゼントも豪華だったのに、帰宅すると、叔父まであさひに抱えきれないほどのサプライズを準備していた。

 祝いが盛大であるほど、あさひは居場所を見失う。

 生まれた時点で間違いだった。世界の不純物であるあさひに、居場所などあるはずがない。彩月は言葉をぼかしていたが、彼女の父親が放っておけなかったくらい立花陽音が打ちひしがれていたのは、あさひという不本意の子供を身籠ったからだ。

 志乃達がほとんど家を空けていた頃、あさひに誕生日はなかった。幼少時代は寂しかったが、そこだけは育江が正しかったと、今も思う。


 そうしたことを考える内に、あさひは口数まで減っていたのだろう。

 心配した志乃に、あさひは就職活動があまりにも難航している悩みを打ち明けた。彼女は、こんな可愛い子を取らないなんて罰当たりだね、と笑った。

 志乃に悪意はなかったと思う。

 だがあさひは、自分の顔が輪をかけて曇ったのを自覚した。


 …──君、可愛いね。ウチの息子のお嫁さんを探しているんだが、会社員なんかやめて、お見合いしてやってよ。

 失礼だけど、胸大きいね。彼氏はいるの?


 不採用の通知を受けた数多の会社に、こうした質問をあさひに向ける面接官達がいたのは、一度や二度ではなかったからだ。彼らは舐め回すような視線をあさひに這わせて、学校や仕事とは無関係な話題ばかりを出したがる。彼らの見せる顔つきに、あさひは心当たりもある。
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