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秘匿の闇市〜Midnight〜
第8章 愛され少女の教育法
淡い水色のロリィタ服と、赤い振袖。
どちらも売り物より凝った装飾が施されていて、礼などいくらしても足りないことは明白だ。加えて、二学年下の鈴子と小花のあさひを見る屈託ない目は、あまりに屈託ない信頼を湛えている。
彼女達だけではない。隣で笑っている同学年の友人らも含めて、誰もあさひの表面的な部分しか知らず、手放しに好意を持ってくれている。それは、卒業していった上級生達も同じだった。
娼婦の孫は娼婦だの、一度身体を売った女は死ぬまでそうした生き方をするだの、いつか佳子があさひに言った。今になって、その通りだと痛感する。
あさひは、志乃のように強くなれない。
あさひに公平な態度を向ける面接官らは、ひと握りだ。
一年の高校休学は、理由にならない。あさひの他にも同じような学生らがいるが、皆、内定が決まっている。冬華のいる橋谷の会社は、辞退した。彼女とはあれから会っていない。好意を寄せられた途端、怖くなって距離を置くのはいつものことだ。