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秘匿の闇市〜Midnight〜
第8章 愛され少女の教育法
緊張もしなくなるほどの数だけは面接をこなしてきたあさひに、最近受けた企業からメールが入ったのは、十月も終わりに近づいた頃だ。
またぞろ手ごたえはなかったのに、採用を前向きに検討したいこと、もう一度顔を合わせたいということが、書かれてあった。
当日、あさひは講義を終えてすぐに着替えると、志乃に帰りが遅くなる旨の連絡を入れた。その足で指定先のホテルに着くと、連絡を受けていた受付係が、あさひに部屋の番号を伝えた。
部屋にいたのは、見知った面接官と、心なしか彼に慇懃な態度をとらせている男だ。後者の男があさひに名刺を差し出すと、そこには、代表取締役の肩書きを冠して島村という名が印字してあった。
「わざわざお時間をいただいて、有り難うございます」
深々と頭を下げる面接官に、あさひは首を横に振る。バッグを足元に置いて、礼儀として薄手のコートを脱ぐ。
面接官が、島村に耳打ちしていた。
「ねぇ?証明写真、補正じゃないでしょう。実物の方が可愛いんですよ」
「まさか、これほどとは……。うーん……ウチは細腕でも出来る業務もあるから、採用するか……」
「それはもちろん。ですが、どうです?その前に。このタイプの女は、絶対に訴訟を起こしたりしませんよ」
父親ほどの男二人が話している内容を、あさひは理解出来なかった。
また、見た目が彼らの眼鏡に適ったのか。
それだけは理解して、少なからずうんざりした気分になっても、採用が決まるならまだマシだ。