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秘匿の闇市〜Midnight〜
第8章 愛され少女の教育法
「薄汚い人間は、性根までどうかしてるな。豚箱に入れてやりたいよ」
「ど、どちら様……で……?」
「飼い主だって言っただろ」
「冗談も大概に──…」
「あれで純真だから。ちゃんと愛して、守ってあげる覚悟もない人間に、あの子に触れる資格はない」
鮮やかな赤のロープに動作を封じられた島村は、面接官に視線を投げる。
だが、面接官が動くより先に、彩月があさひを寝台から起こした。
「こんな分かりやすい落とし穴、わざと騙されたの?欲求不満なら、相手するのに」
「違っ……」
「分かってるって。でも、……」
「ぁっ……」
彩月のコートがあさひをくるんだかと思うや、前触れなく身体が浮いた。
「荷物はあれだけ?」
「えっ、でも……あ、あの、私、体重も増えたので……っ」
お姫様抱っこは恥ずかしい、と訴えるあさひを抱えたまま、身を屈めて荷物を拾った彩月が部屋を立ち去った。
エスカレーターに乗ったところで、ようやくあさひは下ろされた。ロビーを出ると、一台のタクシーの側で煙草をふかしていた運転手が、彼女を見るなり車内に戻った。
タクシーが走り出す。
道中、あさひは彩月が解雇されたことを聞かされた。運転手の耳がある手前、詳しくは場所を移してからの説明になるという彼女は、円満退職して佳子との私的な契約も切れた。あさひを迎えに行くよう指示されたらしい。