この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
秘匿の闇市〜Midnight〜
第8章 愛され少女の教育法
タクシーは、冬華を思い出すようなマンションの前に止まった。
部屋に入ると玄関脇に段ボールが積み上げてあって、まだほとんど生活感はないにしても、良い物件だというのは分かる。
「あ、叔母さんに連絡しないと」
「あさひの居どころ訊いた時、朝まで借りるって言っておいた」
「そうですか……」
彩月がある扉を開けた途端、あさひは目を疑った。
ほぼ薄茶と青で統一されていた、ガラスの仕切り越しに見えていたリビングや廊下と違って、そこは淡い白や花柄が面積の多くを占めていた。カーテンも絨毯も、クローゼットも、志乃の好みが影響した、あさひの生活している空間に似ている。
「ここは……」
彩月の好みが変わったのか。客室か。
あさひが頭を悩ませていると、背中に柔らかなものを感じた。鎖骨に絡みついてきた懐かしい感触。しなやかで、しかし包み込むような腕に抱かれて、あさひは心臓から輝いていくような自分自身を自覚する。
「一緒に暮らそう」
「っ、あの……でも、……」
「大丈夫。就職先なんか決まらなくても、ここなら家賃はいらない。あさひを手に入れる前提で、買ってあるから」
「でも……私なんて……」