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秘匿の闇市〜Midnight〜
第8章 愛され少女の教育法


 タクシーは、冬華を思い出すようなマンションの前に止まった。

 部屋に入ると玄関脇に段ボールが積み上げてあって、まだほとんど生活感はないにしても、良い物件だというのは分かる。


「あ、叔母さんに連絡しないと」

「あさひの居どころ訊いた時、朝まで借りるって言っておいた」

「そうですか……」


 彩月がある扉を開けた途端、あさひは目を疑った。

 ほぼ薄茶と青で統一されていた、ガラスの仕切り越しに見えていたリビングや廊下と違って、そこは淡い白や花柄が面積の多くを占めていた。カーテンも絨毯も、クローゼットも、志乃の好みが影響した、あさひの生活している空間に似ている。


「ここは……」


 彩月の好みが変わったのか。客室か。

 あさひが頭を悩ませていると、背中に柔らかなものを感じた。鎖骨に絡みついてきた懐かしい感触。しなやかで、しかし包み込むような腕に抱かれて、あさひは心臓から輝いていくような自分自身を自覚する。


「一緒に暮らそう」

「っ、あの……でも、……」

「大丈夫。就職先なんか決まらなくても、ここなら家賃はいらない。あさひを手に入れる前提で、買ってあるから」

「でも……私なんて……」
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