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秘匿の闇市〜Midnight〜
第3章 飼育される侍女達

* * * * * * *

 苺ヨーグルトのかかったオートミールに、ささみ肉が散らされたサラダ。スパイスの香りがする、ミルクで割ったアイスティー。…………


 それらを見た瞬間、あさひに一抹の不安がよぎった。


「有り難うございます。あの、私、食事はサプリメントで補うことがあって……こんなに食べたことなくて……」

「成長期なのに、それで細いのか。食べきれなくても美影さんとあたしのおやつにするから、好きなだけどうぞ」


 美影というのは、明け方の運転手らしい。どれだけの奥行きがあるか分からない、この西洋風の大きな館には、主の佳子と、そして彩月と苑田美影(そのだみかげ)の他に、住人の影がない。


 あさひは寝台の下に腰を下ろして、手を合わせた。


「いただきます。彩月さん、スプーンかフォークは?」

「何、生意気なこと言ってるの」

「え……」

「お前、買われてきた自覚ある?小松原さんも、よくこんな無駄遣いして……。ペットはどんな食べ方するか、分かる?」


 意見や質問を躊躇いなく出来る女は、いつか誰にも愛されなくなり、不幸になる──…育江は、そうあさひに説いていた。相手に尽くせ。考えるな。

 だとすれば、あさひはカトラリーを使うべきではない。

 鉄格子の向こうでは、相変わらず佳子が水槽でも眺める感じで、あさひ達を鑑賞していた。


パシッ…………


 皿に伸ばしたあさひの手に、彩月の平手が飛んだ。
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