この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
秘匿の闇市〜Midnight〜
第3章 飼育される侍女達
* * * * * * *
苺ヨーグルトのかかったオートミールに、ささみ肉が散らされたサラダ。スパイスの香りがする、ミルクで割ったアイスティー。…………
それらを見た瞬間、あさひに一抹の不安がよぎった。
「有り難うございます。あの、私、食事はサプリメントで補うことがあって……こんなに食べたことなくて……」
「成長期なのに、それで細いのか。食べきれなくても美影さんとあたしのおやつにするから、好きなだけどうぞ」
美影というのは、明け方の運転手らしい。どれだけの奥行きがあるか分からない、この西洋風の大きな館には、主の佳子と、そして彩月と苑田美影(そのだみかげ)の他に、住人の影がない。
あさひは寝台の下に腰を下ろして、手を合わせた。
「いただきます。彩月さん、スプーンかフォークは?」
「何、生意気なこと言ってるの」
「え……」
「お前、買われてきた自覚ある?小松原さんも、よくこんな無駄遣いして……。ペットはどんな食べ方するか、分かる?」
意見や質問を躊躇いなく出来る女は、いつか誰にも愛されなくなり、不幸になる──…育江は、そうあさひに説いていた。相手に尽くせ。考えるな。
だとすれば、あさひはカトラリーを使うべきではない。
鉄格子の向こうでは、相変わらず佳子が水槽でも眺める感じで、あさひ達を鑑賞していた。
パシッ…………
皿に伸ばしたあさひの手に、彩月の平手が飛んだ。