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秘匿の闇市〜Midnight〜
第3章 飼育される侍女達
調理実習の時でさえ、あさひはこんなに口数を増やして、笑っていたことがなかった。校内掃除を振り返っても、そうだった。
圭は物知りだ。
あさひより二歳上の彼女の見聞が上回るのは当たり前だとしても、それだけではないと思う。
パンでもケーキでもない物体がフライパンの上で良い匂いを昇らせるのを眺めながら、あさひは圭との話に夢中になる。
自分から何かに興味を示すことに慣れないあさひは、圭の積極的な人となりに救われた。学生にしては派手な彼女が、私立の大学がどんな場所かを話すのに伴い、中学や高校とは随分と違うことが明らかになり、あさひの長年の謎も解けた。
「完成。初めてなら、あさひちゃん先に食べて。初めてが佳子さんの前で動物みたいに食べるなんて、楽しみ半減しちゃうでしょ」
それはともかく、直径十二センチほどの生地に生クリームやフルーツが盛られたスイーツは、さすがにフォークを使いたい。
アイスティーを注いだグラスにストローを差して、久し振りに椅子に座って手を合わせると、扉が開いた。
「圭ちゃん、いる?」
顔を出したのは、例の運転手だ。さばさばしていて格好良いが、胸まである黒い巻き毛に、シャツを押し出すほどの乳房──…見れば見るほど、性別を感じさせる色気も強い。
圭は美影に何かの知らせを受けた途端、急いでキッチンを出ていった。
あさひは美影の指示を受けて、佳子の昼食を仕上げる。
美影が佳子の給仕のために一式を持って出て行くと、彼女と圭の二人分の皿に、あさひはラップをかけておいた。