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秘匿の闇市〜Midnight〜
第3章 飼育される侍女達
* * * * * * *
以前は配偶者も住んでいて、彩月と美影も起臥する場所を与えられているのだとしても、庭の広さは庭園並みで、部屋の数もかなりある。
掃除は指定の場所だけすれば良いが、家政婦の仕事がまだ頭に入っていないあさひにとって、却ってそれがややこしい。意図せず無断侵入しかねない。
この世の食べ物かも疑いたくなるほどぺろりと胃袋に収めることの出来るパンケーキに舌鼓を打ったあと、あさひは佳子が食事したテーブルを片付けて、キッチンの後始末を終えた。それから圭に教えられた通り、館の掃除を再開するため、用具を置いておいた場所に戻ると、雑巾をかけたバケツに見覚えのあるリングが入っていた。
ピンク色のハートの石が嵌め込まれたそれは、さっき圭の右手を飾っていた。
床拭きの時、彼女が引っかかると言って外していたのを思い出す。
「…………」
地下への立ち入りは許可されていない。しかし禁じられてもいなかった。
そして、昼食に戻ってきた美影が言っていたところによると、夕方まで圭は地下で業務をしているという。
持っていて紛失しては元も子もない。
少し、リングを返すだけ。…………
あさひは地下へ続く階段へ向かう。