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秘匿の闇市〜Midnight〜
第3章 飼育される侍女達
学生アルバイトの家政婦達は、度々、あさひに問う。祖母を恨まないのかだとか、プライドや夢はないのかだとか、自我の確立した少女達らしい好奇心だ。
さっき庭掃除をしていた国立大に在学中のエリートも、持ち前の探究心をあさひに向けているところがある。今日も落ち葉集めに専念している振りをしていた彼女の視線は、あさひ達を盗み見ていた。
ただし、あさひには、彼女らを納得させられるだけの回答を出せたことはなかっただろう。
「ここの家政婦さん達、よく怪我されますよね」
このところ胸をつっかえていた、溜飲の下らなかった原因が、ついにあさひの口を衝いた。
「危ないお仕事とか、あるんですか?もし私も覚える必要があるなら、私、要領も良くないですし体力もない方ですし……」
必要以上の質問は、女として感心されない。育江にそう教えられてきたが、いつかあさひも関わるとすれば、心の準備くらいしておきたい。
それに、あさひに親切な彼女達が、よく分からない怪我を負っていると聞くのは、気持ちの良いものではなかった。
あさひの疑問が解消されることはなかった。彩月に心当たりがなかったからだ。
家事の他に佳子の客達をたまにもてなすことはあっても、先日の稲川や林のような女達を相手にしたところで、怪我のしようもないという。