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秘匿の闇市〜Midnight〜
第4章 淫蕩の婦人会
柳亜子(やなぎあこ)が勤務している洋館は、主人の客か家政婦達、医者を除いて、滅多に来訪者がない。それもあってか、外部から見る限りありきたりな森にしか見えない敷地内には、時々、変質者が出る。
今は十二月の上旬だ。
淫らな欲求にかまけていられる気候でもないのに、今夜は小松原家の邸宅に、不審な人物が侵入しているらしい。
佳子の住居を囲繞している深い森は、内側の半分は彼女の所有地で、あとの外側半分が、市の管轄だ。
アルバイト歴の浅い亜子には、その境をまだよく把握出来ていないが、美影曰く、木を見れば判断出来るという。
その美影と、今まさに、亜子は夜の森を巡警している。
不審者は三十歳前後の女で、長い黒髪を二つに結んで、ハイブランドの白いコートを着ているという話だ。
シルバーの縦ストライプの入ったシャツに黒いジャケット、アイボリーに藍で筆記体ロゴが刺繍されたネクタイに、目を凝らせばジャケットより深い黒であることが分かるスラックス。カイロは貼っているにしても、今夜、亜子が指定された格好は、あまりに薄い。
亜子が袖口を指の関節まで強引に引っぱって、気休めであれ夜風を避けるための抵抗をした時、美影が顔を引き締めた。