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秘匿の闇市〜Midnight〜
第4章 淫蕩の婦人会
「おはよ」
「おはようございます」
「はい、顔。先にトイレが良い?」
「いいえ、……」
佳子の姿のない朝だ。
あさひは水差しで歯ブラシを濡らすところから、毎朝と同じ動作を始める。
十二月に入って、この部屋は二十四時間、エアコンが入るようになった。昨年までは肩を冷やさないよう布団もしっかり被っていたのに、相変わらず大事な部分が丸見えのランジェリーだけ身につけて、あさひは全く心許なさを感じていない。
ただし世話役が彩月の時、あさひは室温管理の完璧な部屋に半裸で飼われている自分自身が、無性に恥ずかしくなることがある。
逆らえば、躾という名目で、彩月はあさひに折檻しなければいけない。彼女の手を煩わせるのに気が引けて、やむなく彼女の見ている前で、バケツに跨がり、尿も便も出しているし、月に一度は、月経を吸ったナプキンも渡している。
しかし、排泄物が他人に見られるべきでないことは、知っている。よりによって彩月の目に触れる苦痛。彼女には、自分の美しい一面だけを見せていたい。
彩月があさひと四歳しか変わらないからか、彼女の美貌が家政婦達の中でも群を抜いているからか、この気持ちの根拠は分からない。少なくとも育江に言わせてみれば、きっとあさひが間違っている。
寝台の下に正座して、モーニングプレートに手を合わせた時、あさひは彩月の視線を感じた。
「気にしないで。食べて」
「はい」
館の主人のいない朝は、トレイにもカトラリーが添えられている。
あさひはサラダをフォークに掬った。