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虐げられた新妻~秘密の書斎~
第10章 操り人形
夕方、少し早めに洋介は
待ち合わせ場所に立っていた。
手にした紙袋の中には
先ほど有人から手渡された
小型のビデオカメラが仕込まれている。
美代子とデート出来るというのに
洋介の心は深く沈んだ。
『カラオケボックスの室内で
美代子の痴態をカメラに納めろ』
有人からそのように命令されたが
元来、嘘をつくのが下手な洋介は
美代子に痴態を晒すことができるか不安だった。
「洋介、お待たせ」
いきなり背後から呼び掛けられて
洋介は思わずビクッと体を震わせた。
「ビックリさせちゃった?」
屈託のない笑顔で洋介の顔を覗き込む美代子。
「ああ、ちょっと驚いちゃったよ」
さりげなく返答したつもりが
声が裏返ってしまった。
「無理してない?
仕事帰りにデートなんて…
ほんとは疲れてるんでしょ?」
いつもと雰囲気の違う洋介に、
美代子は疲れているのだと勘違いした。
「そ、そんなことはないよ
さあ、何処かで軽く食事をしてからカラオケに行こう」
あまり長く会話をすると魂胆がバレそうなので
洋介は先に歩き出した。
その後を小走りで追いかけてきて
腕を組んで甘えてくる美代子…
『美代子…これからすることは不倫した事実を丸く納めるために必要なんだ』
洋介は心の中で手を合わせた。