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虐げられた新妻~秘密の書斎~
第10章 操り人形
あまりの怒声に滝の見物客がこちらを振り返る。
痴話喧嘩か?と一部の人たちから嘲笑の声も上がった。
美代子に辱しめを受けさせるはずが
女を怒らせてバカな男だと見下した眼差しが洋介に投げられた。
こうなってしまっては、いつまでもこの場所に留まる事はできない。
ヒールの靴でおぼつかない足取りで山道を降りてゆく美代子を洋介は慌てて追いかけた。
「ゴメン!ほんとにゴメン!!」
車に乗り込むと洋介は手を顔の前で合わせて
美代子を拝むように謝った。
「洋介、この前から様子が変よ
何かあったの?」
悪戯好きだけど優しく接してくれる洋介が好きだった。
なのに、最近の洋介は悪戯だけが先走り
優しさの欠片が見えなかった。
「お詫びにこの後、温泉に立ち寄るつもりなんだよ」
その一言で美代子の怒りがスーッと収まった。
「と言いながら、何処かのスーパー銭湯じゃないでしょうね」と美代子は牽制球を投げた。
「違う、違う。ちゃんとした天然温泉さ
それも秘湯って呼ばれる所だよ」
「まあ!秘湯?
私、一度でいいからそういうところで入浴したかったのよ」
一気に美代子の機嫌が治ったので
洋介は意気揚々として車のエンジンをかけた。