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狂愛の巣窟
第8章 【倫理に反したその先で…】
「十和子さん……」
名前を呼ばれハッとしたがジーッと見つめる視線が可愛いからつい逸しちゃう。
次の約束なんて出来ないけど、そうしたらまた来ちゃうのかな。
それだけは阻止しなきゃ。
えっ…!?
急に顔ごと向かされて彼からキスしてきた。
啄むような遠慮がちなキス。
それに私も合わせる。
舌入れてこないんだね。
焦れったいけどもう煽るのはやめる。
「もうおしまい」
私から離れて距離を取る。
物足りなさそうに諦めた顔。
「酔っ払ってた十和子さんも、今日の十和子さんも僕は忘れる事が出来ません……次また会いたくて潰れそうになったらどうしたら良いですか…?」
また泣きそうな顔で縋り付く。
それ、本当弱いから。
お願い、強く出れなくなる。
間違った優しさで包んでしまう。
「ん………家、行くね?ちゃんと有紗が来ない日、連絡して」
目も合わせれない、ぶっきらぼうに言ってのけたのにここで満面の笑みはズルいでしょ。
手を握られ「ありがとう」と下げた頭で胸に寄せてくる。
簡単につむじやうなじ見せちゃうんだ。
男ならそう簡単に見せちゃダメなんだぞ?
Sの血が騒いで調教したくなる。
自分色に染めて手元に置いておきたくなるじゃない。
これ以上染めたら有紗に気持ちいかなくなる。
いや、もう遅いかも。
これも有紗が望んだ事なの?
違うならお願い、ママから奪って?
取り上げてちょうだい。
そんな心配も他所に。
「良い感じだね、ママ」なんて、こちらも満面の笑み。
ちょっと頭おかしくなりそう。
我ながら娘を疑う。
「焦らして焦らして相手からアクション起こさせるなんてやっぱりママはやり手だね、勉強になる」
「あのさ、有紗は彼の事どう思ってるの?本気で好きとかは感じれないんだけど」
「そうだね、間違いなく純愛ではないね!」ってあっけらかん。
あんな恋する女子高生な顔してたのに!?
「リアルな恋は向いてないんだよね〜全部嘘に見えちゃう」
なんか、デジャヴ………
一時期、私もそんな事言ってた気がする。
逞しいほどに同じ道を辿ってしまうのね。