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狂愛の巣窟
第2章 【主人の会社の方と…】
最上階の部屋に通され、綺麗な夜景……ではなく朝の明るい日射しが差す時間帯。
せかせかと蠢いている世の中を静観している私たち。
「本当は夜景見せてあげたかったな」
後ろから優しく抱き寄せる腕に頭を預ける。
髪を寄せて首にチュッと唇を這わせてきます。
「朝の景色も好きですよ?」
「そうなの?」と言う唇は首筋から耳を甘噛みしてきました。
「こんな時間帯にホテルで密会………不倫の醍醐味じゃないですか」
後ろから抱かれたまま見上げる顔。
一瞬驚いてフッと笑う唇が重なる。
初めてのキスではありません。
よく覚えている唇です。
「連絡くれないから捨てられたのかと思ってた」
「ごめんなさい……主人にバレるのだけは避けたかったので」
「知ってた?十和子ちゃんが相手してくれないから俺が一人で抜いてた事」
「悠介さんなら引く手あまたでしょうに」
「それは十和子ちゃんの方じゃない?結婚しても変わらず綺麗なままなんだもんな……参るよ」
私の事を唯一“十和子ちゃん”と呼ぶ人。
伊藤悠介さん、昨日私に珈琲を淹れてくれた人です。
面識はありました。
享さんの後輩な為に普段は敬語で喋っていますが私と2人きりになるとSっ気が出てタメ口になります。
私が年下なので気にはなりません。
享さんから「伊藤がさ〜」なんて声が上がる度にドキドキしていた。
自宅に連れて来た事もあります。
手料理を振る舞って後日「先輩が羨ましい」と私を執拗に突き上げた。
堕ちるのは簡単でした。
婚約した時にお友達の集まりでお会いしました。
享さんとは大学も一緒だったとか。
親しいといっても上下関係はきちんとしていました。
そんな硬派な彼に気を許してしまったのが始まり…でしたね。
ある日ベロベロに酔っ払った享さんを連れて帰って来てくれたのが悠介さんでした。
子供たちも寝静まった夜中だったのに最後まで面倒見が良くて頼りになって。
すっぴんだった私に「あなたを悲しませたくないので」と。
寝室まで運んでくれた彼にお礼を言った後タクシー代をお渡しするのに受け取らず代わりにハンカチを私のポケットに入れて来たのです。
「明後日、僕休みなんです、そのハンカチその時に取りに来て良いですか」