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濡れて堕ちて……
第6章 贖罪
「別に隠し味もないし、浩一の味覚がおかしいんじゃない?」


「俺の為に作ってくれたんだろ?世界一美味いよ」



今まで、浩一と食事をしてると何故か悲しい気持ちになってた。

それは、浩一は私の手料理をすぐに残したり、食欲がないと言って食べなかったり…

悲しいのはそのせいだと思ってたけど、本当は



料理を残されるのが悲しかったんじゃない。

食べてもらえないのが悲しかったんじゃない。


ただ、無言で

何も言わず、感じず、事務的な処理みたいに

ロボットみたいに食べられるのが悲しかったんだ。


ただ、ただ一言だけでも言って欲しかった。

「味が濃い」「薄い」「美味い」何でもいいから

私の手料理をちゃんと食べてくれてるんだって実感が欲しかった。


「何でまた泣くんだよー…」

「ぐすっ、泣いてなんか…」 



目の前にいるのは本当に浩一だろうかと疑ってしまいそうになる。

仕事のし過ぎで変になったんじゃないかとか、頭を強くぶつけたんじゃないかとか、未だに疑ってる。


けど、もうどうでもいいや。



愛する人との食事って、こんなに幸せだったんだ。









浩一は、本当に変わってしまった。

食事の後、あんなに面倒臭がってたDVDを一緒に見てくれた。

「これって去年話題になってた映画だよな?まぁまぁ面白いじゃん!」

私以上にのめり込んでるし。

「お前はいっつも俺の私情に付き合ってくれてんだし、たまにはお前のお願いにも付き合わなきゃな。でもこの映画はマジで面白い!」

た、確かに一緒にDVD見ようって何度か誘った覚えがあるけど…。
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