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濡れて堕ちて……
第6章 贖罪
私のお願いを聞いてくれるようになった。

無理なシフト変更を要求して来なくなった。

家事を手伝って…、までは行かないが買い物に行けば

「そー言えば、シャンプーと歯磨き粉がなくなりかけてた。買っとかなきゃな」

私より先に気づいてる。


あんなに自分以外の事には無関心だった浩一のこの変わりよう。

いや、本当は観察力は私より優れてる。

記憶力も私より格段上だ。


私があれやこれやと世話を焼いてるうちにその能力が退化してたのかも知れない。

本当は気遣いの出来る優しい人なのかも知れない。



買い物を済ませば───

「重いだろ?ほら、袋持ってやるよ」

「でも…」

私の手からあっさり買い物袋を奪い取った。

軽々と持ち上げるその腕、男の子なんだと実感する。

「重いでしょ?1つ持つよ!」

「重いから俺が持ってんだよ。だったら車の鍵開けて来て」


以前なら、私がどんなに重い荷物を抱えててもスタスタ歩き
自分だけさっさと車に乗り込むような奴だったのに。




週末になれば。

「今週の日曜日、友達と釣りに行くんだけど、陽子も来るか?」


正直、釣りってそんなに好きじゃない。

あのジッと粘り強く待つと言う行為があまり好きじゃないのだ。

私みたいなせっかちな性格の人には向かない気がする。

あれは、狩猟本能を持ってる男性の趣味だ。
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