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濡れて堕ちて……
第1章 孵化
家族なり夫婦なり 

安らげる人が待ってくれてるなんて羨ましい。

「陽子ちゃんも結婚して8年でしょ?そろそろ子供作ったら?可愛いわよ、子供も孫も」

「あはは、そうですね~」


子供や孫か…。


帰りたくない、本当は…。



   





15:00。

ここからは夕方勤務の人と交代だ。

この時間からがまた戦争なのだ。

お夕飯の買い出し、仕事帰りの独身一人暮らしの人はお弁当を買ったり。

私も私で晩ご飯の買い出し。




私はもう帰るけど

あのスーツ君

お昼も来たぐらいなんだから夜も来るのかな?












「休み、ちゃんと取れる?」

「え?」

帰宅早々、台所で包丁を握る私の背中への第一声。

恐らく、休みが取れたかどうかの確認のようだ。

「メールでも言ったでしょ?店長に相談したけどまだ確定じゃないし取れるかどうかもわかんないって」

帰って来て第一声がそれって。
他にもっと違う台詞とかあるんじゃ?

「何で休めねぇの?たかがパートだろ?」

「パートでもシフトが組まれてる以上休めないし」

「正社員の俺と違ってそんな大した仕事じゃないじゃん」


イライラする。
何でわかってくれないの?
    
「だったら日にちズラせない?再来週だったら休めそうだし…」

「だから、友達の嫁さんが今週しか予定が空かないんだって、今朝言っただろう?」




正社員がそんなに偉い?

私の都合より、友達の奥さんの都合?

パートにだって責任はあるのに




「俺の顔を潰す気?」
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