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濡れて堕ちて……
第6章 贖罪
結婚してる私が誰かに別れを告げるなんて変な気分。


徹のマンションに行くには

まずバスで電車の駅まで向かう。


電車で5つ目の駅を降りて10分ほど歩く。

公共交通を使うと大回りしなきゃならない。

車だと早いんだけど、免許も車もない私にはこの交通手段しかないし、不倫相手の元へ向かうのに友達や浩一に頼めるはずもないし。


電車に揺られながら徹との今までを思い出してた。



私があのスーパーで働き出して3年くらい経つかな。

あの部屋で1人、浩一の帰りを待ってるだけの毎日が嫌になった。

何とも言えないあの圧迫感。

仲の良かった友人は遠方に嫁いだり、出世して休みなしで働いてたりして、女子会なんてストレス解消もなかった。

子宝にも恵まれなかったからママ友なんて呼べる人もいなかったし、ご近所付き合いも上手く行かなかった。


逃げ場が欲しかった。


稼いだお金の何割りかを浩一に渡すって約束でパートを許してもらった。

働き出して2ヶ月ぐらい経った頃かな、徹があのスーパーに通い出したのは。

最初は何とも思ってなかったのに、いつからか徹を目で追うようになって

その人と不倫するなんて、あの頃の私には想像すら出来なかっただろうな。



徹を思うだけで幸せになれた。

癒された。


今日はちゃんと伝えるんだ。

徹に“ありがとう”って。




駅に付き電車から下りると空には鉛色の分厚い雲が広がってる。

通りで蒸し暑いと思った。

また一雨来るのかな?


…今の私にぴったりかも知れない。

私の変わりに泣いてくれようとしてるのかな?


一雨来る前に早く行かなきゃ。

びしょ濡れにのまま別れ話って言うのもな…、無意識に足早になる。
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