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濡れて堕ちて……
第6章 贖罪
俯いてた私の心臓は徹の一言でキュッと締め付けられる。


「陽子さんからあんな真剣なメールもらったのは初めてだったし、顔なんか見えなくたって陽子さんの事ぐらいわかりますよ」


徹には適わないな。

いつもいつも、私の考えてる事を読み取って、私のいいようにしてくれる。

今だって、なかなか話を切り出せない私の為に徹から言ってくれた。


私は何て情けないんだろう。


不倫の後始末まで徹にさせてしまった。

本当なら私が自分でケジメを付けなきゃいけないのに。


「ごめんなさい…」


今にもこぼれそうな涙を堪えて、絞り出すような小さな声。

徹は何も悪くないのに…。

不倫をしてたのは私も同罪なのに、徹に全てを押し付けてしまった。


「別れ話かなって大体予想は付いてました…、出来れば理由を聞かせて欲しいんですけど」


「恐くなったの…」


「恐い?」


「徹の気持ちが恐くなったの。

浩一はずっと、私の事を“女”として見てくれなかった。

それどころか“妻”としても見てくれなかった。

でも、徹は私を女性として扱ってくれた。

大事にもしてくれた。

私もそれが嬉しくて徹に甘えたの。

でも…、だんだん徹の気持ちが重くて恐くて。

真剣に愛されれば愛されるほど、だんだん恐くてなっ…」


あんなに大事にしてくれた徹に

私は酷いこと言ってる。

溜まらず涙が零れ落ちた。


「あんなに大事にしてくれた徹に、こんな事思いたくないのに…。

でも、ごめんなさい。

私にはもう、この恋を続けて行く勇気がない…」
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